気づいたら10年打ち込んでいた元スケーターの備忘録

元大学生フィギュアスケーターが10年間のスケート人生を通じて感じたことを、当事者ならではの視点から書いたり、そんな私の感性に刺さったモノを紹介します。

人は一生の中でいくつの「心惹かれること」に出合えるのだろうか

今回は3つのパートに分けて書いてみます。

①星道夫の言葉

②好きの原動力

③「グレー」であり続ける

 

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①星道夫の言葉

 

「短い一生で心惹かれることに多くは出合わない。

もし見つけたら大切に、大切に、、、。」

これは、写真家の星道夫の言葉です。

 

ある日、星道夫の写真展に行ったときに出合った言葉で、

一度見ただけで今でもずっと心に刻まれているほど

スケートに打ち込んでいた当時の私に響きました。

 

この言葉を見ながら

「自分にとって、フィギュアスケートは大切にしなきゃいけないんだな。

競技から引退したとしても、どんな形かはわからないけど大切にしていきたい。」

と感じました。

皆さんにとっての「心惹かれること」、自分が心から夢中になれることは

何でしょうか。そして、それはいくつくらいあるでしょうか。

 

私は20数年生きてきた中で出合ったものが「フィギュアスケート」でした。

約20年で一つ、だとしたら、残りの人生であと4つくらい出合えるのだろうか。

それは多いのか、少ないのか。

 

人は生きていく中で、膨大な数のものや経験に触れて生きていて、

皆それぞれが同じものに触れたとしても

それに心が惹かれる人もいれば惹かれない人もいます。

単純な数で比較して考えてみると、

心が惹かれないことの方が圧倒的に多く、心が惹かれることがいかに少ないか。

その尊さが鮮明に感じられます。

 

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②好きの原動力

 

少し話が逸れるようですが

人を動かす一番大きなエネルギーを生み出すものは

「好き」ということではないかと私は思います。

 

私が10数年スケートを続けてきたのも、続けてこれたのも、

根本には「スケートが好き」という気持ちがあり続けたからです。

「好き」という原動力は、人の人生、生き方を大きく変える力を持っていると

実感しました。

 

このブログもその一例です。

もともと私は自分の意見を積極的に外に出す方ではありませんでした。

そんな私がブログを書こうと思ったのも、スケートがあったからでした。

まずはスケートのことならできると思ったのです。

「スケートが好き」という原動力が

自分の行動を思いもよらない方向に変えたのです。

 

ブログを書く、という行為がそれまでの自分とどれくらいかけ離れていたかというと

ブログを始めたと言ったときに、ある友人から

「罰ゲームでやらされたのかと思った」と言われたほどです。笑 

冗談かもしれませんが、そう思う余地があるほど

それまでの自分では考えられない行動だったのだなと改めて自覚しました。笑 

 

スケートの競技生活の引退が近づいてくる頃に、ひとつ気づいたことがあります。

スケートをここまで長く続けてきたから

自分は一つのことを長く続けられる性格なのだと思っていました。

しかし決してそうではありませんでした。

振り返ってみると、自分がやりたいと思って始めたことでも、

すぐに身を引いてしまったことがたくさんあったのです。

ありがたいことにこれまでたくさんの習い事を経験してきましたが、

ひとつのことを続けた年数としては、スケートは断トツ1位でした。

 好きだから、ここまで長く続けられたのです。

「好き」というパワーが、

そのパワーの持続性・拡大力がスケートは圧倒的だったのです。

 

じゃあなぜそんなにスケートが好きなのか、というのは

これまでの記事を読んでいただいていると理解していただける部分もあるかと思いますが、極論「自分の心が惹きつけられるから」です。

そこに論理的な理由をつけることは、今の私にはできません。

 

私は誰に言われたわけでもなく

自分の意思でスケートを始め、大学卒業まで続けてきました。

ここまで好きになれるものに出会えたことが幸せだなぁと思うのです。

もちろん、そういうものがないことが不幸せだということではないし

スケートの中で、苦しいこと・手放したものもありました。

 

でも、引退した今振り返ってみると、心の底から感じるのです。

スケートにのめり込んで駆け抜けてきた10年は宝物のような時間だったな、と。

 

スケートに出会っていなかったら経験できないような

たくさんの人との出会いや感情の揺れ動きがありました。

喜び、楽しみ、悲しみ、悔しさ、絶望、感謝、感動、緊張、安堵、信頼、、、

フィギュアスケート」というひとつのことを通して

先生や仲間、家族と過ごす日々の中で多様な感情を経験し

人間的にも成長できたのではないかと思います。

 

人生の中でも、胸をはって宝物だと言える期間があるのは、それを作り出したのは、

まぎれもなく「好き」という原動力でした。

 

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 ③「グレー」であり続ける

 

資本主義が軸にある社会の中で生きていると

時として合理性や整合性を求められます。そこを突き詰めていくと、

うまく説明できないものはないがしろになってしまうこともあります。

 

でも、決して合理性や整合性がすべてではなく

「なぜだかはわからないけど、うまく説明できないけど、心が惹かれること」

「気づいたらその方向に心も体も動いていること」

を大事にすることも大事にしたい、と思うのです。

 

何歳になっても、どんな環境の中で生きていても

「心が惹かれること」に出合ったときに

そのことに気付くことができる自分であり続けたい、と。

 

人間は、人間が生きているこの社会は

そんな簡単に白黒はっきりつけられるものではありません。

しかしその事実を理解していながら、白黒つけたくなるときもあります。

「グレーな状態」に不安や焦りを感じるので、グレーを白か黒にしたくなるのです。

白や黒だと、気持ちや行動に迷いがなくなります。

 

でも、「グレーな状態」を恐れない、

「グレーな状態であり続ける」ことをむしろ楽しむ。

そんなことも、人間らしくていいのではないかなと思うのです。

 

「グレー」であり続けることが

「心惹かれること」に出合う、気付くきっかけになるかもしれません。

 

「グレーを捨てない、グレーであり続ける」

社会人となった私が、自分の指針の一つとしようと思っていることです。