気づいたら10年打ち込んでいた元スケーターの備忘録

元大学生フィギュアスケーターが10年間のスケート人生を通じて感じたことを、当事者ならではの視点から書いたり、そんな私の感性に刺さったモノを紹介します。

フィギュアスケートで社会課題を解決できるか

 「フィギュアスケートで社会課題を解決できるか」

 

これが今回のテーマです。

今回はちょっと違った切り口から書いてみようと思います。

キーワードは、「フィギュアスケート」「スポーツ」「社会課題の解決」「社会貢献」「途上国」「国際協力」といったところ。

 

 

スケートをしながらの就職活動

大学生活の後半に差し掛かり、スケートを続けながら就職活動をしていた私の中には、

フィギュアスケートは、社会課題の解決のためにどう役立てることができるのか」

という考えがありました。

 

というのも、私は仕事や会社を選ぶときに大切にしたいこととして

「世の中の社会課題を解決すること」という軸がありました。

 

社会に存在するビジネスの全ては、何らかの社会課題を解決しているとも言えますが、

私がここで出した社会課題というのは、以下のようなものです。

途上国の貧困、子どもの貧困、児童労働、紛争、男女格差、難民

国内外問わずその課題に対して、従来は民間企業ではなく国連や政府・NPOというような組織が解決に向けて取り組んできたようなものです。

 

これら社会課題の解決への貢献の仕方というのは、

1965年からJICA(国際協力機構)が実施している青年海外協力隊の職種を見るとわかるように、(参考ページ:http://www.jocv-info.jica.go.jp/jv/?m=BList

「国際協力」と一言でいっても

IT、土木、食糧、医療、教育、スポーツ、芸術など

あらゆる手段でアプローチが可能なことがわかると思います。

 

キャリアを考える上で、考え方の視点として出てくる

自分がやりたいこと(Will)・自分ができること(Can)・社会や会社から

求められていること(Must) という3つの視点。

 

青年海外協力隊の例で考えると

Mustが募集されている職種(現地で求められていること)だとすると、

自分ができること(得意分野)ややりたいことと重なっている分野の方が

より大きな成果を出すことができて、かつ自分自身の幸福感にもつながると思います。

 

ここではJICAを一例に挙げました。

キャリアを考える上で「社会の役に立ちたい」という思いがあったとしても、

それだけではなく、「自分は何ができるのか、何がやりたいのか・好きなのか」という

自己理解をすることも重要なのだと思います。

 

このようなことをふまえ、自分はこれまで何をしてきたのか、と振り返ると

大部分を占めるのは、やはりフィギュアスケートです。

「社会貢献」や「国際協力」がやりたいなら、

スケートに費やす時間や費用を、勉強したりボランティアをすることを回すことも

考えられると思いますが、私は大学の最後まで「フィギュアスケート 」という

選択肢を選び続けました。

 

以前別の記事で書いた内容にもつながってきますが、

一生の中で心から夢中になれるものには、そう多くは出合わない気がするので

競技から引退したら完全にスケートは切り離す、というのはもったいないな

と思ったのです。

 自分が好きな「フィギュアスケート」を通して、社会課題の解決に関わることはできるのか。あるとしたら、どんな関わり方なのか。そんなことを考えていました。

 

 「フィギュアスケート ×社会課題の解決」

まず耳出しより少し大きな枠でみた一例として「スポーツを通じた国際協力」というのがあります。その例として

・紛争があった地域で異なる民族が混合チームを作り、スポーツ大会を開く

・難民が逃れた先の国で地元のサッカーチームに入り、その地域に馴染むきっかけになる

といったことがあります。

 

サッカーやバレーボール、陸上など、そのスポーツをするための道具があまり必要ではなかったり、場所を問わずに行えるものが多いです。

例えば、サッカーだと最低ボールが1個あればできます。

もし、きちんとしたサッカーボールがなかったら

布を丸めてテープで留めれば代用できるかもしれません。

 

一方スケートは、まずスケート靴が必要です。

これは何か別のもので代用して作るということは難しい気がします。

そしてスケートリンクという特別な場所も必要です。

立派な建物で、氷もきれいに整えられたリンクではなくても、氷の地面が必要です。

(氷ではない、樹脂製のスケートリンクもあるようですが)

とても寒い地域では、湖が凍って自然のリンクで滑れるかもしれませんが、

そうではない地域では、意図的に準備をしないとスケートができる場所がありません。

こう考えると、スケートというのは、誰もが簡単に享受できる環境ではないのです。

 

すこし余談になりますが...

以前ある人には、「スケートなんて地球温暖化防止に逆らってるよね、電気たくさん使っているし。」と言われたことがあります。笑

スケートリンクの維持には 24時間膨大な電気を使用しています。

その電気の発電方法にもよるかもしれませんが、

地球温暖化の対策として電気はこまめに消そうと言われていることを考えると

地球温暖化という社会課題に対して、スケート(スケートリンクの維持)は貢献している、

とはとても言えません。

むしろ、その流れに逆らっていると言えるでしょう。

これを言われたときは苦笑いでした...。笑

 

就職活動を始めてからの私は氷の上で練習しているときに

「今私が滑っていることで、世界で苦しんでいる人の状況は何も変わっていない。だとしたら私が滑っている意味は何だろう。」という大きな問いが何度も頭に浮かびました。

そんなときはとても息苦しくなるような感覚になり、

ジャンプなんて跳ぶ気にならない、そんな心境でした。

 

自分はこれから何ができるのだろうか。

私が出した一つの答えが「スケートを続けてきたことで身に付いた力を活かすこと」。

決して「するスポーツ」としてはメジャーではないフィギュアスケートをしてきたからこそ

できること。それを生かして社会に貢献していくこと。

 

直接的にスケートを媒介としたことができなくても、このように捉えると

スケートをやってきたことは決して無駄にはならない、と自分の中で意味付けたのです。

 

ここで、この見出しに近いことを実践されている方をピックアップしてみます。

 

村元小月さん

現役時代は全日本選手権の出場などの実績があり、

2013年からタイのナショナルチームのコーチとして指導をしています。

タイのフィギュアスケートのレベルは日本と比べるとまだまだ低く、

コーチも足りていないそうです。

個人的には、JICAの青年海外協力隊のスポーツ隊員のようなイメージがします。

(参考ページ:https://news.jsports.co.jp/skate/article/20161228171237/?p=2

 

・キムヨナさん

ユニセフの親善大使に任命されていて、世界選手権の優勝賞金を全額寄付したり、

これまでに約8500万円の寄付金を納め、様々なキャンペーンにも参加してきたそうです。

知名度を生かした社会貢献、と言えるでしょう。

(参考ページ: https://sportsseoulweb.jp/star_topic/id=1403

 

浅田真央さん

2018年より「浅田真央サンクスツアー」というアイスショー

全国のスケートリンクを周りながら開催しています。

他のアイスショーは行わないような地方でも開催することは、

その地域の経済を動かすことになり、「地域おこし」につながっていると言えると思います。

(参考ページ: https://maotour.jp)

 

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 「フィギュアスケート×社会課題の解決」というのは

私の人生の中での大きなテーマの一つかもしれません。

具体的に何がしたいのか、何をすべきなのかということの答えは

まだ見えていません。これはいろいろな道を模索しながら

自分なりに答えを見つけていく、見つけるというよりは

むしろ作っていく、というようなものな気もしています。

 

模索することも楽しみながら、いろいろな道を歩いていこうと思います。