気づいたら10年打ち込んでいた元スケーターの備忘録

元大学生フィギュアスケーターが10年間のスケート人生を通じて感じたことを、当事者ならではの視点から書いたり、そんな私の感性に刺さったモノを紹介します。

スケーターの強み②「腹をくくること」

 スケータ―の強みシリーズ第二弾。

フィギュアスケートをやってきた人だからこそ持つ力、強みについて

第一弾では、「一人で立ち上がる力」について書きました。

今回は、「腹をくくること」について書いてみようと思います。

 

フィギュアスケートの現役生活を引退し、社会人になり仕事をするようになってから、

周りの方からこんなことを何度か言われたことがあります。

「初めてなのに堂々としていたよ」

「それまでのプロセスは一旦置いといて、いざそのときになったら

腹をくくってる感じがするよね」

これらは、人前で立って話す仕事をした後に上司の方からいただいた言葉なのですが、両方ともいい意味で言っていただきました。

 

私は、これはきっと長年スケートをやってきたからこそのものだなと、感じました。

そして、これは私だけでなく、スケートをやっている/やっていた人に共通する

大きな強みなのではないかなと思います。

 

これまでのほかのいくつかの記事でも触れたと思いますが、

スケートの試合では、たった一人で大きなリンクに立ち、たくさんの人の目線が注がれる中、途中で何が起きても最後まで滑りきらなければいけません。

曲が流れ始めたら、頼りになるのは自分だけ。

 

その本番までに、例えば、

・これまではとても調子がよかったのに、前日の公式練習では 

 全くジャンプが決まらない

・本番の直前の6分間練習のときに、緊張のせいか足が全然動かない

(動かしてるつもりなのに動きが鈍い、硬い)

・試合までにはなくなると思っていた足の痛みがとれていない

といったことも起こりえます。

 

上記のようなことが起きたとしても、いざ試合当日、自分の番になったら、

泣いても笑っても自分が滑るしかないのです。ほかに代わってくれる人はいません。

ジャッジや観客といった見ている人は、その人がここまでにどのような状況だったか、というのを詳細に知っているわけでもなく、見られるのは、本番の自分のみです。

 

 正直、ちょっとくらい振り付けを間違えても、違う技をしても、

それが本来のものではないと気づくのは自分と先生くらいです。笑

 

そうなると、本番がやってきたら、とにかくもうやるしかないのです。

とんでもない根性論。笑

そこに至るまでの状況がどんなものであれ、本番の自分の状態が何であれ、

そのときの自分のベストを尽くす。

腹をくくって、最初のポーズをとり、最後まで滑りきる。やり抜く。

 

約10年間、たとえ就活で全然練習ができていないときでも、

コンスタントに試合に出続けたことによって身に沁みついた、

私なりの物事への向き合い方、生き方だと思います。

 

スケートから離れた生活になったからこそ、上司からの言葉で、

より鮮明にそのことに気づかされました。

 

仕事で考えてみると...

例えば、人事として新卒採用の会社説明会を行うことになりました。

当日までにどんなにプレゼンの練習をしても、これまでに何回もやってきている先輩の方が上手だと感じます。

当日は、学生からどんな質問がとんでくるかわかならいのでとても不安です。

 

でもいざ説明会のときがくれば、自分は会社の顔です。

学生からすると、説明会を担当する人が誰であれ、その人の話や立ち振る舞いがどれだけ魅力的かで、その会社に対する印象は大きく左右します。

説明会の瞬間は「自分は会社の代表としてこの場に立っているのだ」という意識で腹をくくり、たとえ学生からどんな質問がとんできても、きちんと向き合って受け答えをするのです。

 

仕事の一事例に当てはめて考えてみましたが

スケートの試合ととても類似しているように思えますね。

 

もちろん、本番当日までの準備や当日のコンディションが完璧であることが望ましいとは思いますが、人間常に完璧なんてことはありません。

そんな現実から目を背けるのではなく、

きちんと受け止め、腹をくくって本番に臨む。

このスタンスを無意識にできる、頭ではなく体が覚えている

という強さを持っているスケーターは少なくないと思うのです。

 

氷の上から離れてしまっても、

そこで積み上げてきたものが

社会人としての自分を支えてくれている部分があるのだなぁと実感したのでした。