気づいたら10年打ち込んでいた元スケーターの備忘録

元大学生フィギュアスケーターが10年間のスケート人生を通じて感じたことを、当事者ならではの視点から書いたり、そんな私の感性に刺さったモノを紹介します。

色鮮やかな南米アニメーション映画から感じた、フィギュアスケートとの共通点

今回は私の中でお気に入りの映画を紹介したいと思います。私は映画鑑賞が好きで、これまでに邦画洋画問わずヒューマンドラマを中心に、ミニシアターに見に行ったりしています。

そんな私の中で、独自の地位にいるのが、この作品。

『父を探して』

 

ご存知の方はいらっしゃるでしょか。

英語題は、『The Boy and the World』とついているようです。

 

2013年にブラジルから生まれた映画で、

2016年のアカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされた作品です。

出稼ぎに出た父親を探しに、少年が世界を旅するというストーリーです。

 

作品概要はこのあたりにしておいて、

とにかく一度『父を探して』の世界観に触れていただきたいです!

その方が少しでも魅力が伝わると思います。笑

 

 

私が一番惹きつけられるのは、

その鮮やかな圧倒的な色使い

ここには南米から生まれた作品である、ということが色濃く表れていると感じます。

少しだけ南米の国に行ったことがあるのですが、こういう色使いは真似したくてもなかなかできない、日本にいると余計に南米らしいなと思うカラーです。

 

どの場面を切り取っても、一瞬一瞬が一枚の絵かのように美しく、力強くも優しいエネルギーを放っています

この世界には、こんなにも素敵なものを作り出す人がいるのかと。

 

そして特徴的なのは、

セリフやテロップといった言語が一切出てこないこと。

登場するキャラクターが声を発する場面はありますが、特定の言語ではないので、見ている人は音としか認識できません。だからこそ、どの国でも見る人それぞれが自分の想像力でストーリーを楽しめるのだと思います。

 

可愛らしいキャラクターや色鮮やかで手書きの質感が優しい世界観とは裏腹に、

ストーリーの中では、社会の格差や環境問題といった、経済成長を優先したがために起こっている社会の矛盾、ダークサイドも色濃く描かれています。

少年は世界を旅する中でそのような現状に出会っていくのです。

ということを踏まえると、個人的には英語題の『The Boy and the World』の方がしっくりきますね。

 

私がこの作品で一番感じたことは、

「言葉を用いなくても、これだけの感動やエネルギー、メッセージを内包し、届けることができる」ということ。

全世界で40以上の映画賞を受賞したということがそれを十分に物語っていると思います。

 

言葉がなくても、そのキャラクター、動き、色使い、音楽、社会で起きていることに対する鋭い観察眼、それを芸術に昇華させる感性などによって、

圧倒的なパワーを持ち、見ている人に伝えてきます。訴えかけてきます。

言葉がないからこそ、全世界に届く普遍性があり、見ている人が考えさせられるようになっているのだと感じます。

 

お気づきの方がいるかもしれませんが、これはフィギュアスケートに共通することですね。

スケートに長く夢中になっていた私だからこそ、

このポイントが刺さったように思えます。

 

フィギュアスケートも、

言葉は用いず、自分の演技、音楽、衣装やメイクでプログラムというひとつの作品を作ります。

それら複数の要素を組み合わせて、どれだけ一体感のある世界観を作り出せるか。

そのときに生まれる感動や放つパワーというのは、テレビや会場でフィギュアスケートを見たことがある方は少なからず感じたことがあるのではないでしょうか。

 

スケート以外のことでも、やっぱり自分という1人の人間が無意識に惹かれているもの、その価値観というのは共通しているものがあるのだなぁと改めて感じました。

 

ぜひ『父を探して』に出合ってみてください。

きっと、新しい世界が広がり、不条理なことも起こるこの社会に対して、それまでよりちょっとだけ明るい希望を持つことができると思います。