気づいたら10年打ち込んでいた元スケーターの備忘録

元大学生フィギュアスケーターが10年間のスケート人生を通じて感じたことを、当事者ならではの視点から書いたり、そんな私の感性に刺さったモノを紹介します。

フィギュアスケートは本当に個人競技なのか

世の中にある多種多様なスポーツを「団体競技」と「個人競技」にわけるとすると、

フィギュアスケートは「個人競技」にわける人が多いのではないかと思います。

 

日本のマスコミで取り上げられるのは

ペアやアイスダンスの選手よりもシングルの選手が圧倒的に多いでしょう。

今回は個人競技団体競技、仲間、ライバルというようなテーマで考えてみたいと思います。

 

フィギュアスケートは、個人競技の面もあれば、団体競技のような面もある。

それが面白いところ。」

あるとき、私の友人がフィギュアスケートの魅力をこのように表現しました。

これを聞いたとき、まさにそうだなーと。

 

もしかしたら、「フィギュアスケートは、一人で黙々と練習を重ねて、試合でもたった一人で滑り切るもの」というイメージを持っている方もいるかもしれません。

それは正しくもあり、一方で、それだけで語れるものでもありません。

私なりに両方の側面からスケートの深掘りをしていこうと思います。

 

1.まずは個人競技の側面について

①練習のとき

以前、スケーターの強みとして

「一人で立ち上がる力」があることについて書きました。

スケートがうまくなるためには、やはり日々の練習が欠かせません。

私は先生からできるだけ多くの時間氷の上にのるように、

怪我をしてジャンプやスピンができないときでも、滑れるなら技を練習しなくても氷の上にのった方がいい、と言われていました。

 

どれだけ先生が熱心にアドバイスをくれたり、仲間が頑張っている姿を見ても、

最終的には自分のスケートは自分がやる気になって練習をするしかない、と思います。

 

②試合のとき

試合では、必ず1人で滑ります。

先生や仲間にリンクサイドから送り出された後は、

途中で転んでも、振り付けを忘れても、最後まで1人で滑りきらなければいけません。

真っ白なリンクの上で頼りになるのは、究極自分のみ。

そして、その時々の自分についての評価がそのまま自分に返ってくるのです。

だからこそ、試合では1人1人の個性が眩しいほど光るのだと思います。

 

2.団体競技の側面について

①練習のとき

1で書いた内容だけ見ると、スケートは個人競技の側面が強いように思われますが、

一方、仲間の存在が大きな役割を果たすのも事実です。

 

所属する大学、習っている先生、レベルを表す級、学年、、、

これらが違っていても同じリンクで練習している人は、教えあったり、

動画を取り合ったり(自分のスケートを客観的に見るため)しています。

 

私は大学の部活とは別に、地域のクラブにも長年所属していました。

春休みや夏休みといった長期休暇のときには、同じ先生についていた仲間とは

家族よりも長い時間を一緒に過ごしていた日も珍しくありませんでした。

 

朝練から始まり、昼のグループレッスン、陸上でのトレーニング、

夕方から氷上に戻り各々自主練をして、夜練。

 中学・高校の頃の夏休みはこんな日々を積み重ねていました。

この、決して楽とは言えない練習を乗り越えられたのは

言うまでもなく、仲間と一緒だったからです。

 

どんなにきつくてもみんなが頑張っているから私も諦めない。

先生がいないときは何でもないようなことでみんなで大爆笑したり。

振り返ると、1人で練習していただけではできない経験、

見れない景色が数え切れないほどあります。

 

②試合のとき

試合は、だいたい同じレベルの人同士で競うように

所持級ごとにクラスわけがされています。

練習のとき同様、大学などが違っても、

自分が出ていないクラスの仲間はリンクサイドから応援しあいます。

 

では、同じクラス人同士はどういう関係性なのか。「ライバル」なのか。

この問いに明瞭に答えることは難しく思います。

 

同じクラスで出ている人は大学1年の頃から毎回競ってきた

という人が少なくありませんでした。

 

私はまさにその状況でした。

中学のときから一緒にやってきた子と同じ所持級だったため、

毎回同じクラスで試合に出ていました。(もちろん、その子以外にもいましたが。)

ある予選の試合では、何位までが予選通過というラインがありました。

もちろん自分が通過するためには、自分はいい演技をして周りの人はあまりうまくいかなかった、という方がいいかもしれません。

 

しかし、そのような試合では、ライバルというより

「絶対2人で予選通過しよう」というものでした。

自分は自分で全力を尽くし、その子が最高の演技ができるように応援し、祈ります。

一つに技が成功/失敗するたびに、一喜一憂していました。

 

 刺激を与えあうという意味ではライバルでもあり、一人一人が最高の演技ができるように声援を送り合う仲間でもある。私はそんなふうに思います。

 

個人競技であるけれども、決して一人ではやっていけない。

1人1人がその人の個性が詰まったスケートを磨き上げていく過程には、

地道な日々の練習と、必ずライバルや仲間の存在があります。

 

フィギュアスケートは、個人競技の面もあれば、団体競技のような面もある。

それが面白いところ。」

この言葉をきっかけに、改めて私自身スケートの魅力に浸っているのでした。